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40 ウォーレン公爵夫妻
私は、朝から何度も鏡を見てはマリーにおかしなところはないか確認していた。
「マリー、服はこれで大丈夫かしら。髪は乱れたところはない?」
「完璧です。きっとウォーレン公爵家の皆さまにも好印象を抱いていただけると思いますよ」
不安で何度確認してもすぐに不安になってしまう私に、マリーは根気よく付き合って太鼓判を押してくれた。
私は最後にもう一度全身を鏡で確認して、馬車に乗り込んだ。
馬車はウォーレン公爵家への道のりをゆっくりと進んで行く。
貴族たちは王都と領地にそれぞれ家を持っている。同じ王都に住んでいるため、王都が広いとは言えどそれほど遠い距離ではない。
しかし今日は、緊張からか時間が永遠に感じる。馬車の窓から外を見ると、建物の間から雲ひとつない青い空が見えた。
空が「今日はうまくいくよ」と応援してくれている気がして、ほんの少し心が軽くなった。
馬車が止まる。
「こんにちは、フィー」
門まで迎えに来てくれていたルーが馬車の外から声をかけてくれる。
馬車から降りようとする私に、ルーはさっと手を差し出した。
ルーのエスコートで馬車を降り、華やかな庭園に感嘆しながら歩く。
ウォーレン公爵家の格式高い玄関に一歩一歩近づいていくと、歩みを進めるたびに心臓が忙しさを増す。
玄関の前に立った時には、これ以上ないくらいに心臓がバクバクと音を立てていた。
「す、少し待って。落ち着くから」
ルーにことわって深呼吸をする。よし、少しは落ち着いた気がする。
「もう大丈夫」
心配そうにのぞきこむルーに頷いて、私はウォーレン公爵家に足を踏み入れた。
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