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公爵の言葉でピシリと緊張が走った。
眉をひそめて「ですが……」と口にしたルーに、私は柔らかい笑みを向けた。
「ルー、私もお二人とお話ししてみたいわ」
ルーがいないのは心細い。でも、お二人と話してみたいというのは本心だ。
「本当に? 大丈夫?」
ルーは心配そうに何度も私に確認する。私は笑って「大丈夫よ」と返した。
ルーは後ろ髪を引かれるように振り向きながら部屋を出て行った。
三人だけになった部屋に沈黙が流れる。私は手汗が出ているのを感じながら、公爵が話し出すのをじっと待った。
「さて」
公爵が手を組んで前のめりな姿勢になった。
私も姿勢を正す。
「改めて、ルイスを選んでくれてありがとう。歓迎する」
公爵の先ほどまでの威厳ある表情が崩れておだやかな父親の顔になる。
「ソフィアさん、いいえ、ソフィアちゃんと呼んでもいいかしら? こんなに可愛い子を捕まえてくるなんて、ルイスはさすがね。そうそう、お義母さんと呼んでちょうだい。私の子どもはルイスしかいないから、娘ができるのが夢だったの」
公爵夫人にキラキラと目を輝かせて詰め寄られて、私は目を回した。
ルーから聞いていた印象と、実際に受けた印象が違いすぎる。
「ええ、お義母さま」
衝撃から立ち直れないまま、やっとのことでそう口にすると、公爵が「私もソフィアさんと呼んでも?」と聞いてくる。
「もちろんです、公爵様」
公爵は顔をしかめて首を振った。
「違う、その、私も……」
公爵は続きを口にするのをためらったようだった。
お義母さまがくすくすと笑った。
「もう、照れちゃって。お義父さまって呼んであげて。彼も娘が欲しかったのよ。私がもう子を産める体ではなくなってしまったから、産んであげられなかったのだけどね」
公爵は顔を背けた。心なしか顔が赤い気がする。
「お義父さま。これからよろしくお願いします」
満足げな公爵、いいえ、お義父さまの様子を見て、私はお義母さまと顔を見合わせて笑った。場の雰囲気が一気に緩む。
「ルイスとはあまり良い関係を築けていないけど、あなたとは仲良くなれると嬉しいわ」
寂しげに笑うお義母さまに、内心首を傾げた。お二人はルーのことを愛していないようには見えないが、どうしてルーは両親と距離を置いているのだろうか。
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