2 友だちがほしい

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2 友だちがほしい

「僕には1人も心を許せる友だちがいないんだ。みんな僕のことを公爵令息のルイス・ウォーレンとして見ている。ただのルイスとして対等に付き合ってくれる友だちなんて、いない」  ルイスは切なそうに息を吐くと、言葉を続けた。 「分かってるんだ、本当は。僕と公爵令息という身分を切り離して考えることなんてできないということは。だって、たとえ僕が身分を気にせずに付き合ってほしいと言ったとしても、僕がいつ怒って公爵令息という身分を振りかざすか分からないんだから。それに、ようやく仲良くしてくれそうな子が現れたと思っても……」  ルイスは言葉を切って黙り込んだ。  私にも心当たりがあった。私も、友だちがいない。  両親が私に友だちができるようにと何度か同年代の令嬢たちとの交流の場を設けてくれたが、令嬢たちは萎縮して、決して緊張を解いてくれなかった。なんとか打ち解けようとして話しかければ、答えてはくれるけれど、いつも私がどのような返事を期待しているのかをおそるおそる伺っている気配を感じる。  たまににこやかに答えてくれる令嬢がいて喜ぶのだが、高位貴族である私と仲良くなって実家を優遇してもらうことや、未だ婚約者がいないお兄さまの目にとまることが目的であり、話したことをすべて大げさに褒められて逆に悲しくなってしまうのだった。  そんな令嬢たちと親しい友だちになれたことは、残念ながら今まで一度もなかった。  幸いなことに、私にはお兄さまがいる。歳は7つも離れているけれど、いつも優しく遊んでくれるお兄さまが。でも、ルイスは一人息子で兄弟がいない。それは、きっと……。きっと、とても寂しかっただろう。
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