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ルイスの涙に私はうろたえた。
「ご、ごめんね! 泣かないで。そんなに嫌だったならルーって呼ぶのはやめるから」
「やめないで!」
私の言葉を聞くやいなや、ルイスが叫んだ。その勢いに驚いていると、ルイスは涙を袖で乱暴にぬぐい、深呼吸をした。
「ルーって呼んで。突然泣いてごめん。愛称で呼ばれることに憧れていたけど、今まで両親ですら呼んでくれたことがなかったから。嬉しかったんだ。君がそう提案してくれたことが」
私は友だちなら愛称で呼びあってみたいと憧れていたけれど、家族はソフィーという愛称で呼んでくれていた。だから、ルイスが家族に愛称で呼んでもらったことがないことに驚いた。
「ご両親に愛称で呼んでってお願いしたことはなかったの?」
「ないよ。2人とも、立派な後継者になるために努力しろ、現状に満足せずもっと上を目指せ、しか言わないんだ。僕のことを息子としてじゃなくて、後継者として見てるんだよ」
苦しそうな表情で語るルイスに、私も胸が痛くなった。
「寂しいね」
私にはそれしか言えなかった。励ましの言葉をかけるのは、正しいことではない気がした。
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