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暗くなった雰囲気を変えようと、私は笑顔で右手を差し出した。
「ルー。あなたは私の初めてのお友だちよ。よろしくね」
ルーはゆっくりと笑顔になり、そっと私の手を握った。
「よろしくね。フィー」
私たちはのんびりとしたペースで言葉を交わした。そして、少しずつ友だちができた実感が湧いてくると、2人で目を合わせてくすくす笑った。
友だち。
その響きは、なんだかくすぐったかった。
しばらくして、私たちは木の根元に寝ころんだ。
会話を続けながら、2人で木の枝やつぼみやその向こうに見える空をながめていると、ルーが思い切ったように口を開いた。
「フィーは貴族ではないだろう。どうして貴族の、ましてや公爵令息の僕と友だちになってくれたの? 黙って帰っても良かったはずなのに」
私はハッとした。友だちができたことに舞い上がって忘れていた。私はルーに嘘をついている。ルーは正直な気持ちを話してくれているのに。お父さまに出された条件は守らなければいけないけれど、ルーに必要以上に嘘をつきたくはない。だから。
「私も友だちが欲しかったし、ルーは貴族であることをひけらかさないだろうなと思ったから。それに……」
「それに?」
「ルーとならきっと仲良くなれる、友だちになれるって直感したの。実際、ルーと話すのはとっても楽しいもの!」
だからせめて、気持ちだけは嘘をつかずに、まっすぐに伝えよう。
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