2 友だちがほしい

4/4
128人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
 暗くなった雰囲気を変えようと、私は笑顔で右手を差し出した。 「ルー。あなたは私の初めてのお友だちよ。よろしくね」  ルーはゆっくりと笑顔になり、そっと私の手を握った。 「よろしくね。フィー」  私たちはのんびりとしたペースで言葉を交わした。そして、少しずつ友だちができた実感が湧いてくると、2人で目を合わせてくすくす笑った。  友だち。  その響きは、なんだかくすぐったかった。  しばらくして、私たちは木の根元に寝ころんだ。  会話を続けながら、2人で木の枝やつぼみやその向こうに見える空をながめていると、ルーが思い切ったように口を開いた。 「フィーは貴族ではないだろう。どうして貴族の、ましてや公爵令息の僕と友だちになってくれたの? 黙って帰っても良かったはずなのに」  私はハッとした。友だちができたことに舞い上がって忘れていた。私はルーに嘘をついている。ルーは正直な気持ちを話してくれているのに。お父さまに出された条件は守らなければいけないけれど、ルーに必要以上に嘘をつきたくはない。だから。 「私も友だちが欲しかったし、ルーは貴族であることをひけらかさないだろうなと思ったから。それに……」 「それに?」 「ルーとならきっと仲良くなれる、友だちになれるって直感したの。実際、ルーと話すのはとっても楽しいもの!」  だからせめて、気持ちだけは嘘をつかずに、まっすぐに伝えよう。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!