ヘラと幸せの小瓶

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「渡してきましたか?」  私が送り出した妖怪に「この幻術の小瓶をヘラくんに渡してください」と伝え、数時間。その妖怪が霊界のゲートの中、つまり霊界に戻ってきた。  私の質問に対し、彼女は「えぇ、バッチリ渡してきましたよ」と答えた。 「ヘラくん、どうでしたか?」 「魔力も空。気力なんてあったもんじゃない。上の空じゃったのぅ」 「そうでしたか……」  私は下を向いて呟いた。  ──彼には悪いことをしてしまいましたね……。  少し反省したが、今はこんなことをしている場合ではない。早く新しい勇者の最終調整をしなくては。 「……わかりました。これから彼には様々な試練や災難が降りかかることでしょう。なので次の旅の目的は彼を守ることにします。化け猫さんは……ヘラくんの精神があの小瓶に壊されないように見守っててください」 「あぁ、わかったぞ。ハレティ坊や」 「ふふ、その呼び方はなかなか慣れませんね」  化け猫さんは溶けるように消えていった。  これは二人を引き裂いてしまった私からの償いだ。少しでも彼の心に安らぎが訪れてくれれば。それだけを願い、私は洞窟の奥の奥へと向かった……。
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