プロローグ「バタフライ」

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プロローグ「バタフライ」

インターネットやスマートフォンが普及し、気軽に自分の好きなものや作ったものをみんなに見せられるようになった時代。 動画投稿をして広告収入を得て生活する者もいれば、趣味や副業として写真をあげたりする者など、使い方はその人次第で、様々だ。 そんな時代に生きている私は、"声"を使って、世界中に発信している。 「というわけで、今回の『バタフライ』もここまで!お相手はDJ AGEHAでした。またねー!」 『バタフライ』。 ネットとスマホがあれば、誰でもどこでも聴ける、無料のインターネットラジオ番組だ。 番組名は、私の名前からつけた安直なものだ。 時間は15分間、パーソナリティは私、相手は視聴者。 昔、好きだったラジオ番組に初めてお便りを送って読んでもらえたのがきっかけで、ラジオにどっぷりハマった時期がある。 その時からずっと、ラジオパーソナリティになりたいと思っていた。 結局、本職に就いたのはネイリストだが、趣味としてやるにはいいだろうと、つい半年前に始めてみたんだけど……。 「またリスナー減ったなぁ。お便りも3ヶ月前からゼロだし。」 現実はそう、うまくいかない。 趣味程度だから自分の生死に影響することはないけれど、こうも反応がないと正直ヘコんでしまう。 お便りも来ないので、コーナーを作っても続かないし、トークスキルもないのでふつおたコーナーですら面白くないのだ。 「こんなに面白くない番組は初めてです」……なんて、番組用のSNSアカウントにDM来たっけ。 「……もう、潮時なんだろうなー。」 DJ AGEHAこと、高梨(たかなし)ひらり。 不人気インターネットラジオ番組の、パーソナリティで、脚本家で、監督である私は、今日も番組の継続を、脳内で会議する。
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