17人が本棚に入れています
本棚に追加
「え!ゴミ出しやってくれてなかったの?」
帰ってくるなり大きな声を上げた私に「ひっ!」と驚く夫。
テレビ画面には、夫の好きなゲームキャラクターが剣を構えている。
嫌な予感がした。リビングからキッチンに向かうまでに、朝私がまとめたゴミ袋が微かに見えたからだ。朝と同じ位置、キッチンのゴミ箱の横に変わらず置いてある、それ。
出かける前に、まだベットの中で半分夢を見ている夫に声をかけていったのに。なんなら、昨日の夜も、私明日早番だから、ゴミ出ししておいてね。と、頼んでいたのに。甘かった。カラスに荒らされる心配を差し置いてでも、万全にネットを被せ、私が出していくべきだった。
次のゴミの日まであと三日もある。ビニール袋を硬く縛っていたとしても、匂いが漏れてこないか不安で、一気に憂鬱な気分になった。
「ね!聞いてる?ゴミ!」
変わらずゲームの敵の相手をしている夫に畳み掛けると、夫は一応コントローラーを置き「忘れてた、ごめん」と言った。
面倒くさそうな顔をしていた。
仕事で疲れているのにすぐ家事をしなければならないこと、部屋が子供たちのオモチャで溢れかえっていること、捨てられるはずだった、ゴミ。この一室の全ての光景が私の神経を逆撫でする。
こんなにも人がイラついているのに、
「やっぱ、装備強くするか〜」と、まだゲームの世界から抜け出さない夫に辛抱たまらなくなり。
「私だって働いてるんだから、そうちゃんが休みの日くらい協力して!」と、大声で叫んでしまった。
私の声に、タブレットを見ていた子供たちの目がどんぐりみたいになり、背中がシャキリとなる。
「ごめんって!ちょっと忘れてただけじゃん」
気分を悪くしたのか、ゲームをやめた夫は、どこかに出かけてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!