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ニ十分くらいして、そうちゃんの車が来た。
後ろには子供達も乗っている。私の姿を発見するなり、大きく手を振ってそばに車を停めた。
「大丈夫か?」
「うん、なんとか」
「家帰ろ。りかちゃん」
コクンと首を振り、涙を滲ませながらゆっくりと助手席に座る。
「子供たち、連れてきてくれたんだね」
車を走らせるそうちゃんに声をかける。
「うん。だって、りかちゃん心配するでしょ。ちょっと帰って来なかったら、いつも青い顔で探し回ってるじゃん」
「……ありがとう」
ハンドルを握りながら、そうちゃんはふふっと笑った。
そしてこんな私に「疲れたでしょ。寝てていーよ」と言った。
また涙が込み上げた。そうだ。この人は、とても優しい人だった。
ーー
〝そうちゃん、私、子供ができた〟
二十代前半での妊娠を、私は職場のトイレで知った。職場の先輩はみんな口を揃えて育てられる?と言った。ある人は、彼氏も同じ年かぁ。大丈夫か?と頭を抱えていた。
妊娠して嬉しかったけれど、みんなの意見やネットの口コミを見て不安になっていた。
そうちゃんは若いし、最近仕事を始めたばかりだ。驚いて、嫌な顔をされたらどうしよう。
そう思いながら、恐る恐るそうちゃんの反応を見た。
けれど、そうちゃんは、すごく笑っていた。
やったー!と、飛び上がって喜んで、私の頭を撫でてくれた。
〝おめでとう!りかちゃん〟
社会人になったばかりで、きっと彼も不安だっただろうに。一番大きな、おめでとうをくれた。
嬉しかった。
ずっとこの人と生きていきたい。
そう思った瞬間だった。
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