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もしかして、急な予定が入ったから会えなくなったとか、かな? LINEで済ませるのは申し訳なくて、電話をかけてきてくれたのか……って、咲がそこまで律儀な性格ではないことは、十年以上の付き合いがある私はよく分かっている。 色々と考えている間に着信音は鳴り止み、ちょうどやってきたエレベーターに乗ろうとしたところで2回目の着信が入る。 これには流石に妙な胸騒ぎがして、私はエレベーターには乗らずにその電話を取った。 すると、私が確認するよりも先に、耳は雑踏音のようなものが聞こえてきて、そこに紛れるようにして咲の声が聞こえてきた。 「あっ……繋がった!光莉?」 「うん、そうだけど……」 「急にごめんね。今、電話しても大丈夫?」 「大丈夫だけど、どうかしたの……?」 私の問いかけに、咲はすぐに答えてはくれなかった。 耳を澄ましてみると、沈黙の向こう側では誰かの声がしている。 男性の声だったので、咲の旦那さんだと思ったけれど、複数の話し声のようにも聞こえた。 「咲……?何かあったの……?」 もう一度、今度はさっきよりも真摯に問いかける。 自分の声が緊張で微かに震えているのが気になったけれど、そんなことはすぐに頭の中から消え去ってしまうくらいに、咲の口からは信じられない言葉が飛び出した。
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