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––– 夢を語れるのって格好いいと、俺は思うよ
学生時代のことなんて忘れてしまったことの方が多いのに、夕陽に照らされた彼––– 兼光君の横顔は、今でも鮮明に覚えている。
––– 兼光君には、夢はないの?
––– そんなものないよ
私の質問に、高校時代の彼は自虐的な笑みを浮かべながら、吐き捨てるように呟く。
その時、余計なことを言って彼を傷つけてしまったのかもしれないと、そしてそれを詫びることもできなかった過去の自分を悔いている。
十年前の話を、彼はもう覚えていないかもしれない。
けれどもいつかどこかで再会したら、「あの時はごめんね」って伝えたいと思っていた。
それなのに……嘘、でしょう?
同級生の思いがけない訃報に、訊きたいことは沢山ありすぎて、私は気持ちを落ち着かせながら冷静に問い返す。
「……それって、病気で亡くなったってこと?」
兼光君の実家は、街で大きな病院を経営している。
確か医学部に進学したという話を噂で聞いたが、そんな彼が病気で亡くなるなんてことは考えにくい。
すると、咲は思いがけない返事をした。
「ううん、事故だって。正確には事故に巻き込まれた的な……?」
「交通事故?」
「そうじゃなくて……紛争っていうの?兼光君、カメラマンでそういう地域によく出向いていたらしくてさ」
咲の言葉に、耳を疑った。
紛争とか、カメラマンとか、私の想像を遥かに超えるキーワードが出てきたからだ。
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