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彼が医学部に進学をして、順当に人生を歩んでいたら、今頃は医者になっていたっておかしくない。 当然、その約束された堅実な未来を歩んでいるものだと思っていたし、例え何かに挫折をして途中で諦めていたとしても、どうしてよりによって……。 「……っていうか、どうしてカメラマンなの?」 「えっ?さあ……私も詳しくは知らないけどさ。柳なら知っているんじゃない?」 「……」 確かに、咲がそこまで兼光君の近況に詳しいはずがない。 高校を卒業してからも同窓会は何度か開催されて、地元に戻れば顔見知りのメンバーで集まることはあったけれど、そこに彼が姿を見せたことは一度もなかったのだ。 それでも地元に帰るたびに、彼の実家でもある病院の近くを通るたびに、もしかしたら偶然会うかもしれないと期待していた自分がいた。 明日だってそうだった。 駅前で、商店街の通りで、通っていた高校の近くで。 けれども今、その期待は粉々になって砕けてしまった。 「……明日の夜がお通夜みたい」 「……」 「光莉、夜にはこっちに帰ってきているよね?」 「あっ、うん……」 呆然としながら私がそう答えると、咲は夜の7時くらいに実家へ迎えに行くと言ってから、電話を切った。 咲とはいつも長電話をしてしまうけれど、今日は要件だけを伝える短い電話だった。 それでも私はスマホを握りしめたまま、暫くの間そこを動くことは出来なかった。
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