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高校時代は写真部に所属をして、周囲に便乗して定期的にフォトコンテストに参加をした。 勿論、自分の写真が入選したことなど一度もなかったけれど。 部員は10名足らずで、活動は週に2回。 フォトコンテストの参加以外に主な活動内容として、毎月テーマを決めてそれぞれに撮影をして月末に評論会を行う。 5月のテーマは「初夏」だ。 教室の自分の席から見える、新緑の隙間から差し込む木漏れ日が綺麗だったことを思い出し、それならば夕暮れの時間を狙って撮影しようと決めていた。 放課後になり、暫くは教室に残っていたクラスメイト達も、1時間も経てば誰もいなくなってしまった。 そのタイミングを見計らって、私はリュックの中からカメラケースを取り出した。 カーテンの隙間からは、爽やかな風が入り込んでくる。 窓の外にはちぎり絵のように敷き詰められた桜若葉が見えて、私は首から下げたカメラを構えてファインダーを覗いた。 レンズを回してピントを合わせて絞りを決めて、シャッターを押す瞬間は、幾度となく経験しても緊張感に包まれる。 だから、背後から物音がした時、思わず体をビクッとさせて大袈裟に反応してしまった。 「あっ……ごめん。驚かせた?」 そこにいたのは、同じクラスの兼光君だった。 同じクラスになって2ヶ月、話したことは一度もなくて、私は自分が話しかけられているのだと把握するのに数秒を要した。
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