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「ううん、平気」
「いつも、こんな時間まで残っているの?」
「まさか……。今日は部活で……」
浮いた存在というわけではないけれど、真面目で優等生タイプだった私は、誰とでも気さくに話せる性格ではなく、特に男の子は苦手だった。
それでも、何事もなかったかのように平然と返事をできたのは、兼光君には他の同級生とはどこか違う落ち着いた雰囲気があったからかもしれない。
はっきりとした恋愛感情があったわけではないけれど、視界に入ると、なんとなく目で追ってしまうような稀有な存在。
そんな彼は、私のカメラに気づいて問いかけてくる。
「それって、一眼レフってやつ?」
「あっ……うん、そうだよ」
「いつも持ち歩いているの?」
「部活の時だけ持ってきているの」
そう答えると、彼は興味を抱いたのか、じっと私のカメラを見つめてくる。
自分が見つめられているような気分になり、ドキドキと心臓が激しく昂ってくると、彼は突然何かを思い出したかのような調子で言ってくる。
「そういえば俺、円谷さんの写真見たよ」
「え?」
「去年の文化祭で展示会していたでしょ。写真、昔からずっとやってるの?」
「うん……。小学生の頃におばあちゃんからフィルムカメラをもらったの。それから写真を撮るのが好きで、昔はカメラマンになるのが夢だった」
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