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先輩の肩越しに見える壁時計に目をやると、終業時間まではあと約2時間。 この何事もトラブルなく無事に終われば良いのだけれど、長期休暇に入る前だからなのか仕事が終わる兆しはない。 そこに追い打ちをかけるかのように、一本の電話が鳴り響いた。 「円谷さん、ひばり保険の仲村さんからお電話です」 「あっ、はい。ありがとうございます」 電話をしてきた人物を聞いて、やや気持ちが重たくなる。 心なしか周囲からも同情の視線が向けられ、三矢先輩に至っては、「がんばれ」と言わんばかりに目配せをしてきた。 「……お電話代わりました、円谷です……はい、こちらこそお世話になっております」 電話をかけてきた仲村さんは、私が依頼を受けているクライアントの広報担当である女性だ。 いつも納期直前に大幅な変更を提示してくる、とても厄介な人物として社内で名を馳せている。 きっとまた、ややこしい注文を追加されるのだろうなと覚悟をしていたが、まさにその通りだった。 「……今から宣材写真の差し替えですか?それだと本日中の納品は難しくなりますけど……いや、そう仰られましても……」 難色を示しても、相手は少しも引いてくれる様子はない。 結局は言いくるめられるような形で承諾をしてしまい、電話を切った後でとてつもない後悔に襲われた。 思わず大きな溜息をついてしまった私を見て、三矢先輩が心配そうに尋ねてくる。
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