376人が本棚に入れています
本棚に追加
それから全ての業務が終了したのは、午後8時を回った頃だった。
1時間くらい前までは、まだ他にも残っている人はいたけれど、この時間はもう他には誰も残っていない。
シャットダウンしたパソコンの画面に映り込んだ顔があまりにも疲れ切っていて、思わず失笑してしまった。
そういえば、三矢先輩が帰り際に、下のコンビニで差し入れを買ってきてくれていた。
冷たい微糖のカフェオレとマカダミアチョコレートだ。
冷蔵庫に入れてあると言っていたので、私は少し気分を浮き立たせながら、隣の給湯室へと向かった。
そこには共有で使用している小さな冷蔵庫が置いてあり、いつも中は私物でいっぱいだけれど、今日は連休前だからなのか一掃されていて、コンビニの袋が一つ置いてあるだけだった。
「まるちゃんへ、お疲れさま」という、可愛らしい付箋に先輩の綺麗な文字で書かれたメッセージに、ほっこりと心が癒される。
それらをありがたく口に含むと、無事に仕事を終えた達成感に満たされた。
「……今日は久しぶりに、ビールでも買って帰るか」
たまには頑張った自分へのご褒美も悪くない。
それに明日からは連休だし、新幹線の時間は昼過ぎなので朝はゆっくり寝ていられる。
そうと決まれば、ヘアクリップで一つにまとめていた髪を下ろして軽く手で慣らし、私は急いで帰る支度を始めた。
最初のコメントを投稿しよう!