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子供の頃、遠い親戚のお葬式で、側にいた祖母に尋ねたことがある。
死んじゃった人は、これからどこに行くの?と。
誰かが亡くなるということの意味を理解できずにいた私に、祖母はこう説明してくれた。
人は死んだら、一番楽しかった時代に戻れるのよ、と。
それから何年も時が過ぎて、そんな都合の良い話はフィクションの世界だけのものだと分かるようになった。
誰かが居なくなった後に残るのは、幾許かの寂しさなのだということを知り、そして人はその寂しさを受け止めて、向き合いながらも生きていかなくてはならないということを覚えた。
けれども、そこに残るのは寂しさだけではないということを、身をもって実感したのは、ここ最近のことだ。
ある日、私に降り掛かった数奇な出来事。
今でも、夢だったのではないかと思わざるを得ない、遠い記憶の中にいたはずの彼と過ごした、甘くも切ない日々のこと。
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