ありがとう

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 光に満ちた未来が閉ざされていく様な不安。  胸が潰れそう。  辛くて、怖くて、そして何より申し訳なくて…  ごめん。  ごめんね。  新生児マススクリーニングで"両耳要再検(リファー)"と言われ、再検査でも、1ヶ月検診でも結果は同じだった。  それでもどうにか希望を繋ぎながら過ごしてきた。  何度も何度も何度も名前を呼んだ。  何度も何度も何度も…  6度目の検査を終え、静かに告げられた確定診断は聴力レベル90dBの高度難聴。  今日、世界で一番大切な(れん)の耳が聞こえていない事が決定的となった。  何で…どうして蓮が?  どうしよう…どうしよう…どうしたら良い?  答えなんて分からない。  寝息を立てる蓮を見つめていた。 「いっちゃん」  帰宅した律が私を呼び駆け寄って来る。 「蓮の耳…ね……やっぱり、聞こえて無かったぁー…」  私は笑って報告した。  笑っていないと叫び出してしまいそうで…  崩れ落ちてしまいそうで… 「大丈夫だ」 「…」  力強く優しい声が  頭に置かれた手が  温かい。 「自分のせいだーとか、思ってんだろ?」 「…」 「泣け泣け‼︎」  しがみついた律のシャツは汗で少し湿っていた。返信も応答もない私を心配して急いで帰って来てくれたんだと分かった。  学生の頃から楽観的な律の、何の根拠もないのに結果的にいつもどうにかなる「大丈夫」を何度も聞いてきた。  だから律の「大丈夫」は本物だって事、私はちゃんと知っている。  それでも、どうしてもいつもの様にはいかない。  不安は消えない。 「蓮が……可哀想……」  堪えきれないやるせない想いが嗚咽と共に口から溢れ出た。 「やっぱり一緒に行けば良かったよな…ごめんな」  律の声も手も微かに震えていた。  あぁ、そうか…  私は一人じゃないんだ。  この不安を共に抱えていく律がいてくれる。  私も律にとってそういう存在でいなくちゃダメなんだ。  結婚して、夫婦になって、親になって、家族になって…幸せだけを思い描いていた。  大切な人が増えた分、幸せと同じだけの恐れを背負うという事を思い知った。  前を向いて行くしかない。  怖いけど、分からないけど、不安だけど、 それでも…頑張るしかない。  産まれて来て良かったと笑って貰える様に。
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