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「命とか…普通にそんな事で死にたくねーし」
『ちなみに、言っとくけどメリットは大きいぜ?』
そう言って指を立てる男。
「……聞くだけ聞く」
クッキーをパキンと齧ったが、思ったよりクレープの胃もたれの余韻が酷くて齧ったまま皿の上に置いた。
『真斗くんが結構危ない』
その言葉に俺はピタリと動きを止めた。どう言う事だよ。
「……真斗になんかしようとしてる?人質とか絶対許さないけど」
ギロリと彼を睨めば、彼は違う違うと手と首を勢い強く振る。
『彼はミラージュの核を持っていて、最近それが発覚したんだ』
「……ミラージュって何?」
なんと言うごてごてした女の子らしいネーミングセンス。まあ、この男が危害を加えようとしてるわけじゃないならまあいい。
この話が嘘かも本当かもわからないけど。聞くだけ聞いた方が良いだろう。
『ミラージュってのは敵の大きな栄養分の事。それを集めるためにあいつらはミラージュの強い人間を襲う。だからこそ1番近い君に彼を守って欲しいんだ。』
「……、ちょっと。考えさせて」
『…うん。だけど時間はない。できるだけ早くお願い』
「ん」
俺は書類を手に握ってそこを出るとGoogleマップでさっきのクレープ屋に戻った。
「!まろちゃん!大丈夫…?」
女の子に逆ナンされていた真斗は俺を見つけると俺の元に駆け付けてくる。
「へいき。ちょっと腹痛起きた」
「ならいいけど…、ほんとにへいき?」
と俺のおでこと真斗のおでこを合わせた。
「う、わ」
近い。
「大丈夫そうだね」
「んお、おう」
そうしてぎゅんとしてたらすぐ近くで大きな音がした。
「「!?」」
驚いてそっちを見上げれば大きな一つ目のモンスターが、ぎょろりとこちらを見た。
「っ……、に、逃げようまろちゃん!」
ぐっと俺の手を掴んで抱き上げると真斗はありえない速度で走り出す。
「う、おっ、ちょ、待って真斗!」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!」
ただ、明白にわかるのはモンスターは俺たちを追って来てる事。
「っ、」
5分くらい逃げているが、モンスターは俺たちを、真斗を狙っている。助けろよ魔法少女。早くこいよ!
そう念じた時、急に真斗が膝からがくんと倒れる。
「真斗!」
俺が支えれば真斗の背中には大きな傷が出来ていた。
「っ、まろちゃ、」
その顔を見た時に俺はぷつっと何かの線が切れた。
「っ〜〜…!魔法少女が来ねーなら、なってやるよ公然猥褻男!はやくしろ!!」
俺がそう言って自分の指を噛み切って指印を押せば、男が出て来て魔法陣から少し抜け出すのを難しそうにしている。
「きらりちゃん参上!!よく言った!君名前何?」
男はそう言って俺の隣で決めポーズを決める。
「……あんまり好きじゃないんだけど」
『いいからいいから』
「………き、きみまろ」
『え?』
2回も言わせるなと俺は彼を睨んだ。
「だから!神麿だってば!」
そう言うと彼はブーっと吹き出して笑いながら俺に何かを投げた。
「お前後で絶対殴るから。それとなにこれ」
『そのボタン押せば変身できる』
ステッキの様だ。俺は覚悟を決めてぐっとボタンを押し込んだ。
壊れたおもちゃの様ながびがびな音がこのステッキから鳴る。
これ、本当に変身できんのか?
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