恋する魔法少年

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さらさらと鬼が消えて行く。俺は立ち上がって周りを見る。 思ったより人がいて俺は少し怖くなる。 「……、カメラ向けないで」 俺がそう言って人のスマホをがつん、と下ろせばその人は戸惑った様な顔をして、それと同時に恋した乙女の様な顔をした。きもちわる。 「あ、あのっ!!」 後ろから、真斗の声がする。またか、と思いながら俺は無視して飛び跳ね、マンションの上へ登り遠くへ行った。 夜になって肌寒くなる時間までぼーっと街を眺めた。 『お疲れ、帰ろーぜ。多分今月お前の収入えぐいと思う』 俺はぼーっとするのをやめられなくて、その言葉に反応できなかった。 そうすれば俺の隣にきらりは腰掛けて一緒に夜空を見た。 次の日の朝、俺は風邪を引いた。 『馬鹿だな、あんな寒空の下で格好つけるからだよ』 「元々身体弱いんだよ、うるせえ」 げほげほと喉を痛めながら俺はおでこに冷えピタを貼った。 真斗が少し心配だが、今は治す事に専念しよう。 布団に潜ってスマホを開けば嫌でも昨日のトレンドが目に入る。 『いやー、流行ったな。「グレーの魔法少女」』 そうなのだ、昨日の戦いを何人かがネットに上げたのだ。肖像権がとか色々言いたいが、まあとりあえずそのせいで俺は少し流行った。少し良い気分にもなったがあれ、やばくね、と思い直したのだ。 大衆の意見は考察とか褒めの言葉とかもろもろ。 「可愛い推せる」 「物理の魔法少女は初めて見た」 「スタイルが良い」 魔法少女はお前らのために命を張ってるのにこんなこと言われちゃたまったもんじゃねえ。まあ俺の場合は真斗のために命張ってるんだけど。 『真斗ちゃんの近くにモンスター来たらまろに教える』 「どーも…」 あんまりもう話題になりたくないし嫌なんだけどな。 『そう言えば男の魔法少女、もう1人出たぞ。彼も特殊色でー…、えっと白だったっけか?』 「まじかーでもまあ俺のが強いっしょ」 『その過信が命取り……、でもないかまあ多分そうだと思う』 俺の言葉にこくりと頷いて1人で納得しているきらり。 「眠いから寝る、あとで起こして」 『一応俺らビジネスパートナーだけど…、まあいいやおっけー』   俺はそのままスマホを閉じて眠りについた。 『おい、おい!起きろ!真斗くんがやばい!』 「っあ…?」 頭がガンガンする中無理矢理起こされて俺は不機嫌なまま起き上がる。 『蛇モンスターだ。多分今の時期モンスタークラスターが起きててみんな真斗くんを狙ってる。』 俺はもうなんでもいいと思いながらステッキを握って変身した。 『……おい、あんまり無理すんじゃねーぞ』 「わかってる。行こう」 軽い体とは裏腹に俺の心と脳はだるいだるいと言っている。 きらりに案内されて俺は蛇を見つけた。俺は蛇の尻尾を握るとぐわんぐわんと振り回して向こうへ吹っ飛ばした。あとはきっと他の魔法少女がやってくれるはずだ。 「うわ、やべ…」 『大丈夫かまろ!』 頭がガンガンして凄く痛い。目の前が霞む。ふら、と足がおぼつかなくて前に倒れた。 「先輩かわちい〜」 誰かに支えられて、そんな声が聞こえた気がした。
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