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「あれー?無いなぁ」
「なに探してんの万智?」
「ここらにベストの型紙なかったかなって」
備品棚を捜索する私の背中を、マナミンが軽く叩き、私は探し物が何かを答えた。
「何サイズ?」
「L」
「Lなら、こっちの棚じゃない?」
マナミンが右に並ぶ棚を指差す。新学期で被服室の模様替えをした為、どこに何があるのか分からなくなってしまった……。しっかりしてよ私の記憶力。
「ベスト作るの?」
「うん。てか、今月の課題じゃん?」
「そうだった~」
忘れてたのか……?マナミンの記憶力も私と変わらないな。
「でも、Lだと万智には大きくない?」
言ってマナミンは、察したと言うように目と口を大きく開いた。
「ね?出来上がったら誰にあげるの?もしかして彼氏できた?」
「え!?なになに!?万智ってば彼氏いるの!?」
ユンユンまで乗ってきた。自慢ではないが、産まれてから十六年、彼氏どころか男友達すら居ない。
「違うってば!お父さんにあげるの!」
「何だ、つまんな~い」
マナミンがヘッと笑う。別に彼氏なんか要らない。そもそも男子が苦手なのだ。小学生の頃から小柄で髪が短い私は、女子として見られず、いつも男子にからかわれたりしていたのが苦い記憶となってしまった。だからって女子が好きな訳じゃない。そう言うのは漫画の世界だけで十分だ。
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