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「あたしは居ないけど、マナミンは居るよね?」
「うん。洋くん」
「洋くん?誰?」
尋ねると「え!?」と言う顔をされた。知らないものは知らないのだから仕方ないでしょうが。
「大平洋だよ。お、お、ひ、ら、よう!」
「あ、ああ!タイヘイヨウくんか、サッカー部の」
「人の彼氏を世界三大洋みたいに言わないでくれる?」
「まぁまぁマナミン抑えて抑えて。クラスでもタイヘイヨウで通ってるしさ」
「ユンユンは良いよね。洋くんと同クラで。どうして私は違うクラスなの~!?ユンユン替わってよ~」
「ムチャ言わないでよ……」
嘆いて無茶ぶりするマナミンに、ユンユンが苦笑で返す。恋する女子ってこんな感じなのだろうか?この恋愛脳め。
「そこ!騒がしいよ!真面目にやりなさい」
愛梨先輩に叱られてしまった。敬愛する前部長の百合先輩から部長に任命され、物凄く張り切っている。
松本百合先輩──優しくて面倒見の良い私の憧れの先輩。彼女は人として尊敬している。だから部を引退されたのは寂しく思う。
「あ、エリリン先輩!今年もフラ部の衣装作り手伝って良いんですよね?」
これは百合先輩の意志でもある。引退する時、被服部は今後もフラ部に協力するようにとの言葉を残したのだ。エリリン先輩は勿論とばかりに頷く。
「良かった~。実はもう、奈瑠ちゃんに協力するって言っちゃったんですよね~あははは」
「あはは、じゃないよ万智~。突っ走る所は変わらないんだから……」
「先輩の言う通りだよ?そう言うところでは治しな?」
「マナミンまでそれ言う?」
不満げに口を尖らせると、先輩とマナミンは二回も頷いた。
「分かりました~。善処しま~す」
肩をすくめて言うと、先輩とマナミン、ユンユンの三人は呆れたような息を漏らした。
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