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「お疲れ様でした~」
被服部の部活が終わり、私はいそいそと部室を後にする。急ぎ足なのは奈瑠ちゃんの所へ行く為である。何の用事かと言うと、フラガールズ甲子園で彼女らが着る衣装の事だ。
向かう前にメッセしておくか。先に帰られてはミッション失敗だし。
用事あるから昇降口で待っててと送る。しかし、数分しても既読が付かない。どうやらまだ部活中らしい。ならばと先に昇降口で待つ事にした。
フラ部と交流して数ヵ月。何だかんだ仲良くやっている。奈瑠ちゃんは常に全力でフラダンスに励んでいる。それは私も同じだ。被服部で作る作品には、ひと針ひと針、魂を混めているのだ。そんな私達だからか、奈瑠ちゃんとは通じ合うものがあるのかも知れない。
「ふぁ……」
今日は疲れた。裁縫は神経使うからなぁ。特に裁断は失敗できないから集中力ハンバない。二度目の欠伸を噛み殺した時、メッセが届いた。奈瑠ちゃんからだ。練習終わって今から来ると書いてある。
そう言えば今朝、フラ部に二人、一年生の子が入部したって奈瑠ちゃんが嬉しそうに話してた。どんな子か興味あるな。
「お待たせ~!」
奈瑠ちゃんの声。その後ろに居る、見慣れない二人が新入部員だろう。他のメンバーは見当たらない。まぁ、奈瑠ちゃんに衣装の事を聞くのが目的だから問題ない。
「ほんと、待たせてごめんね。ところで用事って何?」
「うん。フラガールズ甲子園で使う衣装の事……なんだけど……」
話ながらも二人の女子が気になり、無意識に視線が向いてしまう。
「あ、紹介するね。この子は花園美薔薇ちゃんで、こっちの子が加藤麗愛ちゃん。二人とも期待の新人!美薔薇ちゃん、麗愛ちゃん、この人は針谷万智ちゃん。被服部でフラ部の恩人なんだよ」
「花園美薔薇です!よろしくお願いします!」
「加藤麗愛です。よろしくお願いします」
小さい方が花園さん。大きい方が加藤さんか。
「二人って、そんなに凄いの?」
「フラ経験者でね、今日のレッスンもコーチから合格点もらったくらいなんだ~」
なるほど。それで奈瑠ちゃんは上機嫌なのか。
「万智ちゃんごめんね。二人増えたから衣装作り大変になるよね?」
「ん?ああ、それは大丈夫。って、それより本題なんだけど、衣装のデザインって出来てる?エリリン先輩がなるべく早く衣装作りに取りかかりたいって」
「あ、ごめん。デザインは小月ちゃん任せだから聞いてみないと。でも、出来てるかな……。小月ちゃんから話が出てないし」
「それもそうだよね。まだ四月が始まったばかりだし。エリリン先輩が張りきり過ぎなんだよ~。何かごめんぬ?」
「ううん!私の方こそごめんね。小月ちゃんに話してみるよ」
「うん。じゃあ、また明日ね!」
私は手を振り、三人と別れた。花園美薔薇さんに加藤麗愛さん……。どっちも可愛くて衣装映えしそう。作り甲斐あるわ~。
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