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水口 修との出会い
水口 修と初めて出会ったのは、中学生になったばかりの頃だった。
1年10組だった恵美子が、休み時間に、隣の9組の廊下で見かけた少年が彼だった。
白い肌に、やや栗色がかった大きな瞳、スッキリとした鼻筋、髪の色も質感も柔らかなこげ茶色の
美しい顔立ちに目を奪われた。
一目惚れだった。
その瞬間から、恵美子は、休み時間に廊下に出て、彼の姿を探すようになった。
一目でも見る事が出来ればラッキーだった。
数日、観察していると、彼がサッカー部だと言う事が判明した。
放課後、こっそりとグラウンドを見に行ってみる。
グラウンドを走り回る修を目で追いかける日が続いた。
かなりの雨の日でも練習は中止にはならない。
泥まみれで走る彼が可哀想で仕方ない。
勿論、泥まみれになっていても
修はカッコ良かった。
彼の姿を一目見るだけで幸せになり、それが楽しみで学校へ行っていたと言っても過言ではなかった。
恵美子が何気なく声をかけて、仲良くなった、山川 美佐は、偶然にも修と小学生時代の同級生だった。
しかも、彼女の家は、修の家の近所で、学校から帰る時は、必ず修の家を通り過ぎてから、山川 美佐の家に寄るのが日課になっている。
修の家の玄関先には、金木犀の木があって、小さなオレンジ色の花がいい香りを放っていた。
秋になると、この香りと共に、修の顔が浮かぶようになる位、恵美子の心の中には常に彼がいた。
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