春待月の幻

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気づけば呼吸するたびに 白く淡いかたちを この空に浮かべる季節だった あの桜のしたなら 春も夏も秋も いまさえも花火はあげられる 本物の春には 君がいてほしい 素敵な魔法を たくさんくれたのに たくさん見逃してきたんだろう 全ての出来事は 幻のように 空にとけていく呼吸のように 思い出そうとしなくても 勝手に開かれていくアルバム 増えることがないけれど 日ごとに継ぎ足されていく 君がくれた魔法の時間が 君が離れていくたびに 鍵が勝手にひらいていく シャッターをたくさんきってきた 忘れたくないから 忘れないように 1秒をきりとるような 止まらない秒針は いまはこんなにも冷たく あたためかたも知らずに ただ身体をあしたに 引き継いでいく 心はあの桜のしたに 幻想の世界に閉じ込めた もしかしたら 二度とこの名前は 呼んでもらえない そんな未来しかなくても きらいにさえなれない 名前がはじめて 呼吸をした日は 君がくれた魔法 ひとつも 守れなかったのかもしれない それでも 吸ってはいてができる限り あしたに引き継ぐときは 心も一緒に 彩りをくれた いとおしい人へ
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