2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
夏樹
もうすぐ大学を卒業する。
高校までが保護対象期間だった。
私の実家として本籍地になったのが『リーヴライフ』。
事故孤児を受け入れる保護施設だ。
中学2年で両親と弟を亡くした。
私の、誕生日だった。
部活終わりに家族で迎えに来てくれる予定で、私の好きな洋食屋で大好きなオムライスを食べさせてくれる約束だった。
でっかい海老フライがのったオムライス。
今、私の目の前にあるオムライス。
でっかくはない海老フライがのっていた。
咲桜が今日の日のために練習して作ってくれたオムライスだ。
笑顔を浮かべ、私が食べるのを待っている。
両手を合わせた。
「いただき、ます」
「どうぞ。召し上がれ」
にこにこしたまま片手のひらを見せて食を促され、1口目をスプーンですくった。
柔らかい卵に包まれた真っ赤なケチャップライス。
(美味しそう……)
咲桜の視線を感じながら口の中へオムライスを運んだ。
(ん? んんんんーーーっ!!)
何口か勢いをつけてほうばる。
(やばっ)
「うまっ!!」
にこにこ。ぱぁーーーーー。
咲桜の笑顔は満開になった。
「よかったぁ」
嬉しそうな声音。
「咲桜、料理人にならない?」
「私は夏樹の専属お抱えコックですので」
「もったいないなぁ……と思うけど?」
「いいの。毎日美味しいって言ってくれるのは夏樹だけで充分です」
わたしにとってはとても、とてもありがたいことだ。
食べることは好きだけど、残念なことにあまり料理は得意じゃないから。つい腹に入れば何でもいいやって適当こいちゃう。
まさに『胃袋捕まれちゃいました(てへ)』
(そういや『リーヴライフ』でも誕生日に作ってもらったっけ)
最初のコメントを投稿しよう!