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そして女性でありながら『カラテ』と呼ばれる武術に優れたサナが、王太子妃であるリーゼの専属侍女になったのはもう一年も前のこと。その彼女が零した台詞がまたリーゼの知らない単語だったので、ついわくわくと彼女の顔を覗き込む。
一瞬『余計なことを言った』と思ったのだろう。すぐに誤魔化しの苦笑いを零したサナだったが、いつもと同じようにリーゼの好奇心に負けた彼女は、やがて観念したように『らぶほ』の説明を始めてくれた。
「ええと……ラブホテルというのは、愛する者同士が人目を忍んで睦み合うための場所です。利用にはお金がかかりますが普通の宿よりは安いですし、綺麗な寝床が完備されているので、一定数の利用客はいると思いますよ」
サナの説明は要点を押さえていて実に簡潔だった。しかしリーゼはサナの『らぶほてる』の説明に首を傾げてしまう。
「人目を忍んで? この外観ではまったく忍んでませんわ」
「そこはほら、非日常を味わえる見た目が良いのでは?」
「城で……? 非日常を味わう……?」
「……。王太子妃であるリーゼさまに『ラブホ』を説明するのは、難しいですね……」
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