城の隣に異世界から『らぶほてる』がやってきたので偵察に行ってみることにした王太子夫妻のはなし

3/45
前へ
/45ページ
次へ
 そして女性でありながら『カラテ』と呼ばれる武術に優れたサナが、王太子妃であるリーゼの専属侍女になったのはもう一年も前のこと。その彼女が零した台詞がまたリーゼの知らない単語だったので、ついわくわくと彼女の顔を覗き込む。  一瞬『余計なことを言った』と思ったのだろう。すぐに誤魔化しの苦笑いを零したサナだったが、いつもと同じようにリーゼの好奇心に負けた彼女は、やがて観念したように『らぶほ』の説明を始めてくれた。 「ええと……ラブホテルというのは、愛する者同士が人目を忍んで睦み合うための場所です。利用にはお金がかかりますが普通の宿よりは安いですし、綺麗な寝床が完備されているので、一定数の利用客はいると思いますよ」  サナの説明は要点を押さえていて実に簡潔だった。しかしリーゼはサナの『らぶほてる』の説明に首を傾げてしまう。 「人目を忍んで? この外観ではまったく忍んでませんわ」 「そこはほら、非日常を味わえる見た目が良いのでは?」 「城で……? 非日常を味わう……?」 「……。王太子妃であるリーゼさまに『ラブホ』を説明するのは、難しいですね……」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

334人が本棚に入れています
本棚に追加