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2-11.国の行く末
マジュドとの話は結局ナバンの報告を待つことになった。
彼との話以降、ジャーファルは体調不良で寝込み、どの道待つしかなくなったのだが。
ムスラファンと何を話すのかは纏まらなくなってしまった。
ディルガムにわざわざ会ったところで彼が放棄した北部の状況などわかるわけがない。
わかるのは、なぜヤークトに任せたのか、それだけだ。
それだって聞いてどうなるものでもない。
中央軍が解散された。それだけ。
それで北部砦が落ちた、等であれば大ごとだが、実際に何か起きたという報告はない。
詳細はそれこそナバンの報告待ちである。
逆にムスラファンと話すとなると、彼の実の息子の話題の方が避けられない。
ヤークト。
特にジャーファルとその男の関係を知らないマジュドがその名を連呼するたびに、ジャーファルはこみあげてくる熱と吐き気に耐えられなくなる。
双子のストップが入り、マジュドとの話は終わった。
気にしていない。
一人でもできることがある。
王子として生きる。
気にしていないはずだった。
ずっと避けていたその名。
その名が挙がるたび、ジャーファルの上面の決意など脆く崩れ、彼を探す子供の部分が現れる。
子供でもない。
重く、痛みを持って圧し掛かってきた女の月のものが、腹の内から何かを求める。
『私以外とするな』
たったそれだけの簡単な約束が、まるで呪いのようにジャーファルを蝕んでいた。
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