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月日は経ち、子供は大きくなって手が掛からなくなって、あたしにも余裕が出てきた。
晴くんとの時間も考えなくてはならないと、早朝からencounterに来て朝ごはんを一緒に食べるようになった。
晴くんに初めて作ってあげたのは、特製厚焼きたまごサンド。仕事が忙しくてなかなかゆっくり座って食べれない姿を見て、簡単に食べられるように得意な厚焼きたまごをふわふわの食パンで挟んだ。「美味しい」と言ってあっという間に食べちゃうから、嬉しかったのを思い出す。
そんなある日の朝、珍しく飲みすぎたのか、やけに上機嫌な晴くんが突然こんなことを言い出したことがあった。
『いつか佐江子の夢、叶えようよ』
酔っ払いの戯言だと、相手にしないようにいつもの眠気覚ましのコーヒーを淹れて、心を落ち着かせた。
『晴くんはBARがあるでしょ? だから……』
『それなら、大丈夫だよ。ちゃんと後継者見つけたから。だけど、今すぐはさすがに辞めれない。佐江子のカフェを開く計画もちゃんと話して欲しいし』
『……え』
あたしが、今でもカフェを開く計画を諦めきれずにいたこと、気が付いていたの?
いつになく真剣な瞳は、からかっているようには見えなかった。
『……協力、してくれるの?』
『当たり前だよ。今まで僕はやりたいことをずっとやらせてもらってきたんだ。佐江子だって前は、いつかカフェを開きたいって語っていたでしょう』
微笑んでくれる晴くんに、あたしは涙が出るのを必死に堪えたんだ。
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