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真ん丸の手にぎゅっと握られた枝が、地面を引っかいて、線を描く。
「何描いてるんだ?」
と聞くと、男の子の手が止まった。
「わすれちゃった?」
怯えたような声だった。僕はどきっとして、返事ができなかった。
深呼吸をする、空気の流れる音が微かに聞こえた。
「学校で、『大人にしつもんしてみよう』ってしゅくだいが出たの」
「ふうん……」
「みんな、おかあさんとかおとうさんに、『じぶんが生まれたとき、どんなきもちだった?』とかきくっていってた」
「妥当な質問だ」
「ぼく、それじゃつまらないっておもったんだ。だから、七夕におねがいしたの」
「なんて?」
「『しんだときのぼくにあえますように』って」
全く、嫌な拗らせ方をしている子供だと思った。
「それでね、ききたかったんだ。『今日までの人生どうでしたか?』って」
男の子は、ゆっくり立ち上がって、右足を少し動かした。しかし、振り返ることができずに、その場で固まった。そして、小さく震えていた。
「おじさんは、ほんとうに、ぼく?」
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