六才と僕

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「そうだったら、どうする?」  かたかたと音が聞こえてきそうなほど、男の子は小さな身体を小刻みに震わせている。 「こっち見ろ」  恐る恐る、男の子が振り返る。その目いっぱいの池をつくって、身体の震えと共に、大粒の涙となって零れ落ちた。  僕は、眼鏡を押し上げてから言った。 「視力はいくつだ?」  突然の問いに、男の子はきょとんとする。 「目の検査」 「えっと……りょうほう、A」 「おじさんは、目が悪いから眼鏡をしてるんだ」  力の入っていたその表情が、ほんの少し和らいだのが分かった。 「じゃあ、おじさんは、ぼくじゃないの?」  僕は、薄っすら微笑んでやった。 「どうしてそういう物騒な願い事をするんだ」  すると、男の子は、地面に描いた絵を振り返った。 「ぼく、しょうらいは、まんがかになりたいの」 「ふうん……」 「なれたかなって。なれなくても、すきなこと、いっぱいできたかなって。それをききたくて……」  また男の子の顔が歪む。 「できてなかったら、どうしようって……」
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