仮面フーフ

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 繁華街のど真ん中に、突如異形の怪物が現れたのは休日の昼下がりだった。  全身深緑色でを鋭い針に覆われたサボテンを思わせる見た目をしている。  サイズも人間と同等で、針の下には筋骨隆々としたマッチョマンのような体が見えている。 「ぬぅぅぅん!!」  ボディビルダーのようなポーズで気合を入れると、異形の全身を覆っていた針が四方八方へと放たれる。  それはあっけにとられる人々に次々と刺さった。  突如の暴虐に、繁華街はたちまちのうちにパニックになった。  だが、針だらけになった人々も死んではいなかった。  刺さった針は体内へ溶け込むように消え失せ、後には刺さった跡も残っていない。  だが、更なる混乱はその次の瞬間に始まった。  針の刺さった夫婦、カップルが次々に激しい喧嘩を始めたのだ。 「ふはははは、争え争え。我が毒針は絆を断ち切る毒。一たびこの針に身を曝せば、永遠を誓い合った夫婦ですら、一秒と空間を共にすることはできんのだ!!」  パニックになる繁華街を闊歩しながら、異形は毒針を手当たり次第にばらまいた。  泣き叫ぶ子供の声、飛び交う罵詈雑言、殴り合い、つかみ合い、果ては噛みつくものまで現れ、繁華街はたちまちのうちに無法地帯へとなり下がった。  駆けつけた警察もパニックになる人々の対処に追われ、異形へ近づく事すらできなかった。 「我が力があれば、日本どころか世界を崩壊へ導く日も近いわ。ふはははは」 「そんなことは許さん!!」 「悪さもそこまでにしなさい!!」  異形の前に立ちはだかる二つの影。 「なんだ貴様ら!!」  戸惑う異形の目の前で、となりあう二人はそれぞれの腕を頭上でカーブさせ、それを触れ合わせて一つの大きなハートを作った。 「俺はヨイオットー!!」  男性の声でそう名乗ったヨイオットーは、長身でメタリックブルーを基調とした衣装と仮面に身を包んでいる。 「私はヨイツマー!!」  女性の声でそう名乗ったヨイツマーは小柄でメタリックレッドを基調とした衣装と仮面に身を包んでいた。 「「我ら、かめぇぇぇんフーフっ!!」」  決めポーズとともに、繁華街も人々も一切傷つけない爆発が二人の背後を彩った。 「貴様のような悪から世界を守る、正義の使者だ!!」  ヨイオットーは人差し指で力強く異形を指差し、声高にそう宣言をした。
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