自転車のタイヤがパンクした。だから僕は今夜首を吊る

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別段鬱々とした日、というわけではなかった。 五連勤の仕事を終えて迎えた休日。昼食の買い出しへと近所のパン屋に自転車を走らせた。その帰り道、前触れもなく自転車の前輪がパンクした。ハンドルを取られ、危うく転倒しそうになったが、片足を地面に付いて態勢を持ち直した。僕は自転車から降りると無意識に前輪に手を伸ばし、ぺこりと簡単に凹んでしまったタイヤを目にした途端抑えがたい死の欲求に苛まれた。 「ああ、死にたい」 財布の中には六百七十三円。 これではタイヤの修理は出来ない。 今の僕の命の価値は六百七十三円。 だから、死にたいのか?
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