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洋介が愛する『ヨウコ』は、解離性同一性障害により彼自身の体の中に発生した別人格、いわゆる二重人格だった。
今から一年ほど前、洋介が前日までの記憶を失い、しかも女言葉で話し始めたため、両親は大騒ぎ。彼を病院へ連れていった。
翌朝、そんな事件はケロッと忘れて元の洋介に戻ったが、彼の意識としては丸々二晩眠っていたことになるので、彼も慌てた。
以降、朝の起床の度に、彼と彼女の人格が交互に現れるようになった。前日の記憶がないまま生活するのは支障があるので、交換日記を始めたのだが……。
そのうちに二人は、互いを最高のパートナーだと思うようになってしまった。
現在、両親や病院の先生に対しては「もう治った。ヨウコは消えた」と伝えてある。別人格であるヨウコも、洋介本人であるかのように演技していた。
そうしないと、治療と称して本当にヨウコ人格を消される可能性があるからだ。洋介としては、最愛の人が生き続けられるよう、必死に彼女を守っているつもりだった。
傍から見たら歪な関係だが、これもプラトニックな愛の形なのかもしれない。
(「彼と彼女の交換日記」完)
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