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    ◇  ◇  ◇ 「ミユ、明日はどうしよっか?」 「私、観たい映画あるの。昨日──」  金曜日の学校帰り。もともと明日の休みは治美と出掛ける約束をしていた。  治美の問いに希望を述べた加代子に、彼女はすかさず先読みして来る。 「『透明な(Invisible)日々(days)』? “星来”さんがお勧めしてたやつ」 「そう! 別に明日じゃなくていいけど観に行きたいな、って。治美もそれでいい?」 「OK!」  治美とは急速に親しくなって、今では「親友」とも称せる間柄になれたと思っている。  話してみると、“星来”関係以外でも想定外に気が合うのがわかった。「陽キャ」の典型に見えていた、いつもクラスメイトの輪の中にいた彼女と。 「予約できるか調べてみようよ。まだ上映期間あるはずだけど、早く観たいじゃん?」  早速スマートフォンを手にした治美が、映画館の空席状況を確かめているらしい。  昨夜の配信でも、エンディングのメッセージは伝えられた。 【また“星来”に会いに来てね!】  治美との縁を結んでくれた、加代子のアイドル。  そして治美からさらに広がった関係も、元を辿れば同じところに行き着く。  透明人間ではなくなって、日々話して笑い合う現実(リアル)の友人が増え、『親友』さえできた今でも“星来”の存在は色褪せない。  ──だから「会いに行く」よ。“星来”さん。私があなたに会いたいの。                               ~END~
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