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仮想夫婦、はじめました
誰もいないリビング。
真新しいカーテンを開けると、日の光がさしこんでくる。
真新しいダイニングテーブルで朝ごはんを食べ終えた私は、身支度を整えて洗面所に向かう。
メイクを終えて、パンツスーツの上着をはおってから、寝室のドアをノックする。
……返事はない。
あいつ、まだ寝てるのか?
こちとらもうすぐ出勤だってのに、だらしないにもほどがある。
仕方ないので、ドアを開けて、大声でよびかかけることにした。
「じゃ、私、会社行くから。いつまでも寝てんなよ!」
私の名前は油井貴子。
旧姓、水川貴子。
「……わかったぁー。いってらっしゃーい」
今、寝ぼけまなこで手を振ってる彼、油井航と、昨日から夫婦、はじめました。
……とはいっても、実のところ、“仮想夫婦”、なんだけどな。
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