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天井がどんどん下がってくる。
もうあと五メートルほどで私に触れそうなくらい。
この部屋は広さが三メートル四方ほどなのに、高さが五十メートルくらいあって、もう本当にこの仕打ちをするためだけにあなたがこんなものを作ったんだなということがよく分かって、つらい。
苦しんだんだね、私の浮気で。
でも私も今凄く苦しんでいるよ。
あなたに与えた苦痛を考えてもおつりがくるほどだよ。
だからもうこの部屋を開けて欲しい。苦痛を感じるということは、反省したのと同じ。反省したなら、罪を償ったのと同じことだから。
あなたの心の痛みを私への苦痛で贖おうというなら、それは他責指向だ。
それではあなたの知能は程度が知れている。あなたと私が会話していても時々話にならないのはそのせいではなかったのか。
あなたに会いたい。
あなたが飲み込んだまま出ていった、この部屋の鍵を渡して欲しい。
あなたに会いたい。あなたに会いたい。今すぐ鍵を出して欲しい。
あなたが部屋を出る時、あなたが鍵を飲み込んでいる以上、この部屋に鍵をかけることはできないと思ったら、まさかオートロックだったなんて。
汚い。他責指向の人間は汚い。
天井が、私まであと一メートルくらいのところまで降りてきた。
この辺りで下降が止まるかなと思ったら、なんとスピードアップした。
時速十kmほどに加速した天上の杭が、私の頭に届いた瞬間、私は最後の切り札を切った。
もうこれしかない。
「バギマ!」
しかしなにもおこらなかった。
杭に押されるまま、私の体はくの字に曲がっていく。
痛い痛い痛い。
何本かの杭の先端が、私の肌に突き刺さり始めた。
このままでは、出血し、筋肉が破損し、骨が折れて、内臓を打ち抜かれ、やがて体が杭に貫かれてしまう。
どんなにつらい思いをしたとしても、あなたは加害者になるべきじゃない。それは人間の生き方じゃない。
そうと分かってて加害者になる人、バカです。
たとえどれほど傷ついたって、それってあなたの感想ですよね。私はあなたとは違うんです。そうじゃないってデータあるんですか?
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