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――――――――――――――――――――  ――――年、一月二十八日。  事前調査成果  遭遇者  ・大鬼 八千梅が対話 目的は珍品の見物、楽の音を聞いてみたいらしい  ・付喪神五体 八千彦が対話 舞を見たいらしい  ・蜥蜴の妖 道晴対応 美味な料理求める  ・首のない馬と武者 道晴対応 強いものを求めている。戦いたいか。  ・姫の霊 八千梅が対話 生前のように誰かと琴を弾きたい  ・白狼真神 道晴対応 肉を求めて京へ。家族有。いつか来るかも。来てくれたらいいな。 ――――――――――――――――――――― 「ふう。こんなところかな」  道晴は筆をおく。八千彦と八千梅は疲れて既に眠ってしまったようだ。大分振り回してしまったからなあ、と道晴は苦笑する。  今記しているのは饗応の記録である。後には来客の記録と、対応と、結果を纏めようと考えている。第三者の視点も欲しいところだ。誰かに観察者として記録してもらうのもありだろうか。  思考を、想像を膨らませるたびに期待と高揚感に満たされる。饗応場所が完成するのが楽しみだ。 「完成する前にもう少し調査を進めるか……。それに、今の所必要な人材は料理人と舞人と楽人。あとは……」  思いつく限りの案と計画を紙に記す。気が付けば紙三枚に文字がびしりと並ぶほどになった。 「うーん……料理人かあ……」  どこかに良い人材がいないものだろうか。大炊寮(おおいのりょう)あたりにならいるかもしれない。  明日の出仕の合間に覗いてみるか。   「真神がまた来たときに、驚かせるようなもてなしをしないとな」  少年、藤道晴十六歳。室内からもよく見える北斗の七星を見上げ、期待に胸を躍らせるのであった。これが、妖饗応の始まりである。
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