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その後、科学は少しずつ歩みを緩めていきました。
大規模な有人調査は行われど、私が生きている間には、一般人が気軽に宇宙に行ける世の中にはならない。時間と常識が私にそう気づかせてくれました。
そして今や私は床に伏し、彼女が唯一羨ましがった大地を蹴る力すら失いつつあります。
彼女の青白い肌も、脳を振るわすような笑い声も、最後に彼女がどのようにして私に触れたのかすら、直に私は忘れてしまうでしょう。
彼女は、この太陽系の辺境で出会った底生生物の事を覚えているでしょうか。いつかこの星の住民が宇宙のどこかで彼女と出会ったとき、少しだけでもあの一夏の調査が友好的な関係の一助になるでしょうか。それだけが気がかりです。
もう今の私には、小窓から遮る物の多くなった星空を見あげながら、あの小さな銀河を探すことしか出来ないのですから。
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