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それから僕の頭の中は、由希ちゃんへのクリスマスプレゼント探しでいっぱいになった。仕事中でもふと考えてしまう。
彼女に似合うもの。
髪飾り? 化粧品? 香水っていう手もあるか?
暇さえあれば考えて、由希ちゃんにリサーチしてみる。
週末は一緒に出かけながらも、目は店先の雑貨などを追ってしまう。
由希ちゃんに似合うものってなんだ?
ショーウィンドウに映った僕たちの姿が目に入る。
――由希ちゃんに一番似合うのは……。
「ねぇ、智くん、聞いてる?」
繋いだ手を引っ張られて、ハッと物思いから我に返る。
今、なにか思いつきそうだったのに。
残念に思いながらも、彼女に笑みを向ける。
「ん? なに?」
「もう! 智くんってば、このところ、ずっとぼんやりしてるんだもん!」
強いまなざしが僕を見ていた。
怒った顔もとてもキュートだけど、僕は少し反省した。
その瞳の奥に揺らぎがあるのを知っているから。
不機嫌そうな彼女にささやきかける。
「でも、考えてるのはいつも由希ちゃんのことだから」
「ふ、ふ〜ん、それならいいけど!」
とたんに真っ赤になって、そっぽを向く僕の彼女は宇宙一可愛い。
――そうか! そんな彼女に一番似合うのはきっと……。
僕は思いついたアイディアを反芻した。
うん、そうだ。それがいい。それしかない。
由希ちゃんが喜んでくれるといいんだけど。
ようやくプレゼントが決まって落ち着いた僕は、残りのデートの時間を楽しんだ。
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