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「なんだろう?」
プレゼントの包みを開けると、僕が欲しいなと思っていた財布が出てきた。
買い物に行ったときに僕が惹かれていたのを目ざとく見ていたようだ。
一方、由希ちゃんは袋の中から出てきた青いリボンに戸惑っていた。
僕はそれを取り上げて、首に結んだ。プレゼントのように。
「健康状態良好、性格温厚、年収そこそこ、由希ちゃんへの気持ちは誰にも負けない自信がある僕は、君に一番似合うと思うんだ。もらってくれない?」
目をパチパチさせた由希ちゃんは言葉の意味を理解すると、くしゃっとした笑顔になって、僕に抱きついてきた。
「もらう。もらうよ。もう返さないんだからね!」
「お客様、この商品は一生返品不可でございます」
「望むところよ」
受け取ってもらえたことにほっとした僕は、喜びとともに彼女を腕に抱き、その頭のてっぺんにキスを落とした。
僕の胸に顔をうずめた由希ちゃんはくぐもった声でつぶやいた。
「すごい、智くん。なんで、私が一番欲しいものがわかったの?」
気の強い由希ちゃんがちょっと湿った声で、顔を隠しているのが可愛い。
愛おしくてならなくて、笑いが漏れた。
「ふふ、由希ちゃんだって、僕の欲しいものがわかってたじゃないか」
「ううん、私、智くんに無理難題を押しつけといて、自分は平凡なプレゼントだったのが恥ずかしい」
「そんなことないよ。それに、これを喜んでくれる由希ちゃんが僕にとって一番うれしいプレゼントだから」
彼女が顔をあげて、僕を見る。
うれしそうに頬を上気させ、瞳が潤んでいる由希ちゃんは可愛さが極まっている。
僕たちは互いの腰に手を回し、見つめあった。
メリーメリー・クリスマス!
由希ちゃんとなら、きっとこんな幸せな日々を続けていける。
そんな確信を胸に、やわらかな唇をそっと食んだ。
―fin―
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