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第16話 キッズルーム
眩暈がする……このまま買い物を続行すと、閉店時間まで時間がかかるぞ……。
そんでその度に、常識を知らないこいつらは常識はずれのことをして困らせるんだ。
俺はゆらりと立ち上がると、ラビとカートに乗っていたハルを抱える。
「チワ、ここから一ミリも動かずカートを見張っててくれ」
そう頼むと、俺は抱えたラビとハルと一緒にダッシュで食品売り場から離れる。
そして、そのままキッズルームの前まで駆けて行った。
「あ――! さっきのお部屋だ!」
それに気づくと、さっきまでぐずっていたラビが一気に機嫌をよくする。
一旦そんなラビを無視して、勢いよくキッズルームに足を踏み入れカウンターまで行き、キッズルームの受付のお姉さんに詰め寄った。
「すみません、子供二人、預けたいんですけど!!」
至って俺は普通のことを言っている、しかし切羽詰まった表情で言っているから凄みが増していたのだろう。
受付のお姉さんには引かれてしまった。
「は……はい……三十分でお一人様五百円で、合計千円になりますが……」
「お願いします」
俺はさらに詰め寄り千円をバンッ! とカウンターの上に叩き置いた。
くそう……使うつもりじゃなかったのに……勿体無い。
でも、これ以上あいつら構いながら買い物するのは不可能、なら千円は安いもんだった。
「ラビ、ハル、しばらくここで遊んでてくれ」
「いいの!? やったー!」
「くれぐれも、大人しく遊んでろよ! 帽子絶対取るなよ!」
「はーい!」
本当にわかっているんだろうか、とキッズルームの中にご機嫌で入っていく二人の背中を見ながら思ったが、そんな時間もない。
食料品売り場で見張りをさせて、俺が戻ってくるのを待ってる奴がいる。
だから俺はそれ以上何も考えず、大急ぎで食料品売り場に戻った。
「おかえりなさいませご主人様、お早いお戻りで」
チワは俺の言いつけ通り、一ミリも動かずその場で俺の帰りを待っていてくれた。
なんか、たったそれだけのことですごく安心している俺がいる。
「ダッシュで帰ってきたからな……チワも動かず見張りご苦労さん」
「ご主人様の言いつけは絶対ですから。 それより、二人をどこに連れていったんですか?」
「子供預かってくれる部屋、食品売り場だと何するかわかんないからな……」
俺はゼーゼーする息を整えながらチワの質問に答えた。
こんな忙しい買い物生まれて初めてだ……さっさと終わらせよう。
と、思っていたのだが、トラブルはここでは終わらない。
「そういうことだったんですね、では猫ちゃんはどうしたんですか? お手伝い頼んだんですか?」
「ねこ? なんの……あ!」
俺はチワに言われて血の気がひいた。
そういえば、ラビにかかりっきりだったけど、だいぶ前からミケの声を聞いていない!
「ミケいつからいない!?」
「メモを受け取るまではいましたが……肉を持って戻ってきた時にはもう…」
「だいぶ前じゃないか!」
やばいやばいやばい、俺の監督不行き届きだ、俺の責任だ!
そんな前にいなくなったなんて……今から探したって、もうだいぶ遠いところにいるんじゃないだろうか。
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