第11話 はじめてのおかいもの

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第11話 はじめてのおかいもの

「すごいすごい!」  初めての人混みに興奮してラビとハルはぴょんぴょん飛び回った。 「お嬢さん、騒がないでいただけます?」  俺は二人が周りに迷惑をかけないように、春は抱きかかえ、ラビは首根っこを捕まえて自分の方に引き寄せた。  しかし、好奇心はそんなことで止まることはない。  ラビは辺りをキョロキョロと見回すと、ある一角を指差す。 「しゅじんさま! あそこなぁに!?」  俺はその方向に顔を向けると、子供達が何人かいる賑やかなスペースがあった。  子供用のプラスチックの遊具やクッションのブロック、おもちゃが置かれている。 「多分キッズルームだろ、子供たち預かってもらえる場所」 「ラビいきたい! あそんできてもいい?」 「今日はすぐ帰るから行かないの。あそこ受付しないといけないから面倒だし」  俺がそういうとラビは「つまんない」といいながたすごく不服そうな顔をするが、あそこは有料だし無理だ。  だからラビの言葉を無視して手を引っ張り、目当ての店へ行く。 「まずは目的の帽子買わないと……ほら、あの店で好きな帽子選べ」  俺は帽子が売ってるコーナーを見つけると四人をそこへ向かって歩いていく。  するとラビは素朴な疑問を口にする。 「しゅじんさま、ぼうしってなに?」  俺はその質問にハッとする。  そういえば、今日人間になったばっかだもんな……、喋ることはできても、人間じゃなければ帽子という概念もないのか。 「頭にかぶるもの、今チワがかぶってるようなやつ」  俺は初めての人にもわかるように簡単な言葉で説明をした。  ラビは簡単に納得してくれて、自分に合いそうな帽子を探し始め、いろんな帽子をかぶったり脱いだりしている。  それに続いてハルもお気に入りの帽子を探し始めたが、チワとミケはその様子をただ眺めている様子だ。 「お前らもそのままだとカッコつかないだろ、好きなの選んでいいぞ」  しかし、俺の提案に二人ともが首を振った。 「なんでだよ、遠慮はいらないぞ」  耳のことでとやかく言われる方が困るし、どうせ資金は後から姉さんにもらうし。  財布的にはダメージがでかいが、立て替えてもらう前提なら四人分の帽子くらい手持ちで十分足りそうだ。  しかしそういうことではないらしい 「そういうことではなく、お借りした帽子が結構気に入ってしまいまして、時々お借りできればそれで満足です」 「あたしも、窮屈な帽子よりゆったりしたパーカのが好き。耳隠れてればいいんでしょ?」  つまり、今の状況で満足しているということらしい。 「二人がそれでいいっていうならいいけど……欲しくなったら言えよ」 「あたし達のことよりさ、チビ達見てなくていいの?」  ミケは俺の心遣いはさておき、ラビとハルがいるはずの場所の方に指差した。  さっきまで帽子を見ていた二人がどこにもいない 「どこいった?」  俺は慌てて辺りをキョロキョロと見回すと、突然ビービーっという音が聞こえてきた。  店の出入り口にある盗難防止センサーが反応したらしい。  その音がする方向を見ると、商品の帽子をかぶってセンサーの音でキャッキャと喜んでいるラビとハルがいた。 「コラコラ! レジ通る前にこの場から離れるんじゃない!」  これ以上金を払わず店を離れられたら、万引きだと思われて捕まってもおかしくないと思った俺は、大急ぎで二人を担ぎ、大慌てでレジの方へ向かった。
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