第15話 手に負えるはずもなく……

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第15話 手に負えるはずもなく……

「ご主人様、よろしいのですか? ちょっと刺激が強すぎたのでは……」  流石にその姿を痛たましく思ったのか、チワが俺にそういうが、大人しくなったなら結果オーライだ。 「間違ったことも言ってないしな、チワは今の話聞いても大丈夫なのか?」 「当たり前の話しか聞いておりませんので」  チワは俺の質問にケロッとした表情で答える。  そうだな、流石に自分で捕食したことはないだろうけど、犬は肉食だからかそういう事は気にならないらしい。  まぁ頼もしいことに間違いはないかと、俺は渡された肉のパックをもう一度確認する。  そこで、俺はあることに気がついた。 「チワ、なんでサーロインを選んだ? 俺メモに豚ロースって書いた気がするんだけど」 「文字読めませんでしたので……でも美味しそうなのを選びましたよ!」  その返答を聞いて俺は頭を抱えた。  そうだったな、しゃべれるのと文字が読めるのは別問題だったな。  動物だったこいつらに文字が読めるわけないじゃないか、俺は何を期待してたんだ。  チワだって他よりしっかりしてるってだけで、知識があるってことじゃないんだよな。  種類は違うとはいえ、文字が読めないのにメモにあった『肉』をちゃんと持ってきただけ偉いじゃないか。  似てる文字を必死に探したんだろうな……、でもこんな高い肉買えないけどな。 「これ、元の場所に返すからな」 「なぜですか!? いいお肉なのに……!」  チワはそういうと大急ぎで自分の手で口を塞ぐ。  それを見て俺は察した、つまりこいつは文字は読めないが、いい肉かどうかの目利きで、高いことを理解していて持ってくるくらいにはゲンキンな奴だと言うことに。  チワにももう単独行動を許すべきではないな。  ダメだ、マシってだけでチワも野放しにしたらなんでもカゴに入れてくるぞ……。  もう今日は手伝い頼まないでそばにいてもらおう。  俺はサーロインと豚ロースを取り替えるために、無言で肉のコーナーに向かった。  そして肉がずらりと並ぶコーナーを見たラビは、俺と繋いでいた手をブンっと振り払って明後日の方向に走り出した。 「ラビっ!? どこ行くんだよ!!」 「おにくコワイ――!」  さっきまで大人しくしていたラビだったが、さっきの脅しがここで裏目に出たらしい。  肉がずらりと並ぶその光景に、何かを想像したのか怖くなってしまったらしい  俺はカートとチワを掴んでラビの後を全速力で追いかけた。 「ラビ、落ち着け! 大丈夫だから! 肉は見えないようにするから逃げないでくれ!」 「ヤダヤダヤーダ! うわーん!」  なんとか追いついてラビを抱き抱えてそう説得するが、足をジタバタさせて言うことを聞かない。  しかもさっきまではなんとか笑顔だったラビも、ここにきて大泣きし始めてしまった。  ご機嫌ななめになってしまうと、もう手に負えない。  俺がラビを宥めるのに苦労していると、チワが近くにあった箱を手にとりラビに見せる 「ラビ見て、ラビと同じうさぎさんだよ! ほら、こんにちわって!」  必死になってあやそうとしているチワはその箱をラビに手渡した。  それを見て気づいたが、どうやら逃げている間にお菓子コーナーまで来ていたようだ。 「ラビといっしょ……」  ラビは受け取った箱をまじまじと見つめる。  中身はお菓子とおまけにウサギのぬいぐるみが……。  違うな、ウサギのぬいぐるみとおまけのお菓子が入っているようだった。  そんな高いお菓子買えないよ、と言いたいところだがそれのおかげで泣き止むのだったら安いものなのかもしれない。  これを買わないといけないかもしれないことに腹を括ったところで 「かわいそうだから、だしたげる」  そう言って、箱を開けようと手をかけたので、俺はラビの手をガシッと掴んで止め箱を下の場所に戻す。 「ラビちゃん、やめなさい!」  すると落ち着きを取り戻し始めていたラビが、またぐずり始めた。  
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