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娘の名前は『芽生』にした。
私の案だったが、夫は手放しで喜んでくれた。
小さな芽が、ようやく生まれた。
ずっと、待ち望んでいた、新しい命の息吹。
私にとっては最後の子かもしれないけれど、娘にとっては、新しい人生の始まり……。
毎日毎日、退院の日まで夫は病院に通い、私と芽生に会いに来てくれた。
決まって口にする言葉は、
「可愛いね、本当に可愛い。」
こればかり。
ようやく退院の日を迎えたとき、私は娘を初めてこの腕に抱いた。
「小さいね……。」
私が芽生を抱っこしたのに、なぜか夫が泣いていた。
「芽生、初めまして。私がママだよ。」
小指でそっと、芽生のほっぺをつついてみる。
少しだけ表情を変えた芽生。
その姿が、堪らなく愛おしくて……。
「私が、ずっと守ってあげる。生まれてきてくれて、ありがとう……。」
私は、命をかけてこの新しい命を守り、大切に育てていくことを誓った。
何度も泣いて、何度も苦しい思いをして……。
それでも諦めないで、頑張って……。
命の危険までおかして、ようやく授かった、芽生。
私の、大切な大切な、宝物だ。
「芽生、この酷い顔の人が、あなたのパパよ。」
「そんなこと言わないで~! 涙が止まらないんだよぅ……」
涙もろい夫と、まだまだ小さな命。
そして、私。
ちっぽけな、弱い家族かもしれないけれど、それでも愛と絆の強さは誰にも負けない。
私は、そう思っている。
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