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原因は、私にあった。
子供が出来づらい体質。
夫には何の問題もなかった。
「年齢的にも、チャンスは1度。しかもかなり確率の低いものとなるでしょう。30歳になったら、お子様のことは……諦めるべきだと思います。肉体的にも、精神的にも。」
とても話しづらそうに、主治医が言い聞かせるように私に言う。
「不妊治療は、夫婦の頑張りだけではどうにもならないことだってある。金銭的な負担だって、大きいでしょう?」
確かに、いつか何かのために使おうと思っていた貯金は、少しずつ減っていった。
家族で旅行に行こうと貯めていたお金が。
マイホームを建てるために貯めていたお金が。
みんな、みんなただ一人の家族を迎えるためだけに費やされていった。
子育てについて話す近所の年の近いママたちを見て、羨ましい気持ちと同時に憎らしさすら覚えてしまう、醜い自分の心も垣間見た。
「ママにだって、休養が欲しいよ。ずーーっと子供と一緒で疲れる。たまには一人で羽根を伸ばしたいよね。」
そんな、普通のママならだれもが思うようなことに、
(可愛いお子さんがいるだけいいじゃない。贅沢過ぎよ)
と僻んでしまう私。
もう、限界だった。
そんな私を見かねた夫が、私のことを気遣って言った言葉。
「子供がいなくても、僕は君と一緒に居られるだけで幸せだよ。二人で穏やかに暮らしていけるだけでも、幸せだよ。」
気遣って言ってくれた、そんな夫の一言で……。
奈落の底に落ちた。そう私は感じてしまった。
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