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お金はかかってもいい。新しい家族を迎えることが出来るなら。
そう思っていた私が、『私たち』に変わっただけでも、私は心強かった。
そんなとある日、夫が大きな紙袋を持って帰ってきた。
「どうしたの?それ……。」
紙袋の中から出てきたのは、赤ちゃんを迎えるための必需品。肌着や紙おむつ、哺乳瓶などのグッズがたくさん。
「迎える準備は万端にしておこう。諦めないように。」
それは、夫なりの決意表明のようなもの。
私はたまらなく、夫が愛おしくなった。
医師の指導の下、私たちは不妊治療に臨んだ。
そして、その結果……。
「よく頑張りましたね。3か月です。」
30歳になった秋だった。
やっと、ようやく私たちの間に新しい命が宿ったのだった。
「やったね。頑張ったね……。」
「うん、ありがとう……!」
私たちは、まだ妊娠が分かっただけなのに、もうすべてが終わったかのように抱き合ってわんわんと泣いた。
「妊娠中も油断は禁物です。むしろ、妊娠してから安定期に入るまでが最初の壁、安定期に入ってからが第二の壁のようなものです。生まれるまでの油断が、悲しい結果を生むことは多々あります。体調管理、体重管理は必ずしてください。」
主治医が、浮かれる私たちを引き締める。
そう、主治医も私たちを心から応援してくれていた。
だからこそ、赤ちゃんが生まれる瞬間を見届けたいと思ってくれていたのだ。
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