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主治医の指導と夫のサポート。
私は二人の優しさに触れながら、健康管理に努めた。
不妊治療に励んだ1年と、妊娠してからの10か月はまるで違う長さで進んでいった。
不妊治療は、先の見えないトンネルのようで、妊娠してからは、宝物を守りながら進むトンネルのよう。
出口は見えているのに、そこに辿り着くのが不安。そんな道のりを歩いているようでもあった。
そして、ついに陣痛を迎え、いよいよ出産だと気構えをしていた日。
突然、意識が遠のいた。
そして、破水したと足元を見ると……
足元が、血塗れになっていた。
私はそのまま、意識を失った。
気が付いた時、私は病院のベッドの上だった。
まだ、お腹は痛かった。
陣痛のような痛みが、まだ続いている。
右手が、熱かった。
夫が、涙で目を腫らしたような、そんな目で私を見ながら、ずっと力強く私の右手を握っていたから。
「大丈夫?」
「うん……生きてるみたい。」
私はこの時、別のことを考えていた。
赤ちゃんは、無事なのか……?
それを訊ねるより前に、夫が涙声で言った。
「赤ちゃんは……諦めよう。」
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