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高すぎる天井、広すぎる回廊。
いびつな模様が施された石の柱が先まで続き、カツンカツンと響く乾いた靴の音が私を一層不安にさせる。
「フランシカは今や立派な聖女。姉妹なのだから、お前もしっかり勤めを果たしなさい」
「はい、お父様」
聖なる儀式を受ける為、私はお父様と一緒に神聖ロマヌスの大聖堂に来ていた。
お姉様は私の三歳年上で、今の私と同じ十歳の時に聖なる儀式を受けて『癒しの力』を手にしていた。
お姉様は特に才能があったらしく、そのまま神聖ロマヌスへ引き取られ、今や聖女の中でも一級の癒し手としてたくさんの人の命を救っているのだとお屋敷のみんなが言う。
今、世界は混迷を極めている。
国同士の争いを発端に内乱や犯罪は絶えず、人々が団結して戦わなければ全く歯が立たないと言われる魔物による被害も後を絶たない。
国らしきものが興っては滅び、また興っては滅ぶ。
死と隣り合わせの日常。
平和という言葉は本の中だけの夢物語。
とうの昔に人々の心は荒み、争いはもう生活の一部になっている。
だからこそ聖女は尊ばれる。
世界中の荒廃した町村を周って神より賜りし癒しの力で人々の傷を癒し、清らかな心で民に寄り添う。
時には国に乞われて戦場にまで足を運び、戦いで傷ついた多くの怪我人の癒す。
聖女を得た勢力には大義名分があるとされ、戦いにおいては聖女がどちらの陣営に付くかで勝敗が決まるとまで言われるほどだった。
私は聖女になったお姉様を本当に尊敬しているし、三年前、笑ってお屋敷を後にした姿は今でも鮮明に覚えている。
快活で頭が良くて、優しかったお姉様。
大好きで大好きで、同じ聖女として一緒にいられたらと思う気持ちもある。
でも―――
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