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「大賊、ギン・リカルドが聖域内に突如現れましたっ!」
「ば、馬鹿な……っ!」
地揺れの後、聖堂中に響いたギンの咆哮と、慌てて報告にやってきた聖騎士の言葉に大神官ザナドゥの視界が揺れる。
「どうやって聖堂まで入ってきたのだ! プルディアとエルランの軍、それにスインドの傭兵共が聖都を囲っておるはずだろう!」
「や、奴等は地中から現れたようで、恐らく離れた場所から聖域直下まで穴を掘ってやって来たものかと……!」
「穴だとぉっ!? おのれぇっ……主を汚す薄汚い賊めがぁっ!」
万全の体制で迎え撃つつもりだった聖堂勢力が見事に出し抜かれ、地べたどころか地中を這いつくばる虫と揶揄するのが精一杯のザナドゥ。
外では聖騎士と賊の戦いが既に始まっており、逃げ惑う神官の悲鳴と激しい戦闘音が入り混じって大混乱の様相を呈していた。
「聖サラディンより猊下を守護するようお言葉を賜っております! ここは危険です、今すぐここを離れるべきだと愚考します!」
いかに聖堂の敷地、いわゆる聖域に現れたとはいえ、ここには大勢の聖騎士がいる。その上、ロマヌスの最高戦力であるエーデルリッターが二人もいるのだ。
「聖騎士は国軍や傭兵とは比べるまでもなく強い! いかに餌に飛びつかなかったとはいえ、賊は袋の鼠! ここ以上に安全な場所があるはずがなかろう!」
そう叫び、賊に追われて聖堂を離れるなどあり得えないと固辞した矢先、次の報告がザナドゥの豪奢な居室に飛び込んできた。
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